2016年12月30日

こどもたちのためのよげんしゃムハンマド The Prophet Muhammad for Children

今年のラビーウルアウワル一週目に、こちら↓の本の一章目を読み聞かせした際、日本語に訳したので、こちらにシェアしたいと思います。

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この本はフサイン家の子どもたちの日常から、預言者様(SAW)のスィーラやお人柄に触れることのできる、素敵な絵本です。

一章目は、預言者様(SAW)のお生まれになった象の年に起こった出来事についてでした。

【第一章】
ある晴れた土曜日の午後のことです。ファーティマ、アーイシャ、ハムザはイスラームの教室に行っています。アリーは、お母さん、お父さん、おじいちゃんと一緒におうちでお留守番です。ちょうど、おじいちゃんが一週間、遊びに来ていたので、子どもたちは喜んでいました。小さなアリーは、土曜クラスから帰ってきたお兄ちゃん、お姉ちゃんたちと遊ぶのが待ちきれません。一時間経って、ファーティマ、アーイシャ、ハムザがイスラームの教室から戻ってくると、お母さんが夕食を作っているところでした。子どもたちはお母さんのところに駆け寄り、言いました。「アッサラーム アライクム、ママ!」お母さんは子どもたちを抱きしめながら答えました。「ワアライクムッサラーム。今日はどうだった?」「面白かった!」3人が答えるのを聞いて、お母さんはにっこり笑いました。子どもたちはいつも土曜クラスでイスラームについてたくさん勉強して、楽しい時間を過ごしていました。男の子たちは座って牛乳を飲み、ファーティマはお母さんに土曜クラスで担当することになった作品について話しました。作品の締め切りまであと数日しかなかったので、お母さんはファーティマに早く始めるよう、アドバイスしました。子どもたちはおやつを食べ、二階に上がりました。双子たちは部屋に行き、新しいジグソーパズルで遊びに行きました。

ファーティマは部屋に上がり、楽しみにしていた作品に取り掛かり始めました。一時間経ち、ファーティマは黒色の絵の具が乾くのを待ちました。そこへひょっこり、アリーが部屋に入ってきました。一日前に置き忘れた小さなクマのぬいぐるみを探しに来たのです。アリーはクマのぬいぐるみの横に絵の具で光る黒い箱を見つけました。中に何が入っているのか気になって、アリーは箱に自分の小さな指を突きさしました。ファーティマは洗面所で手を洗っていたところで、部屋に戻ると大きな声を上げました。「アリー、やめて!それ、私の作品なの!」アリーはすぐに指を引っ込めました。「ぼく、見ていただけだよ!これなあに?ファーティマおねえちゃん。」アリーが聞きました。「ただのつまんない真っ黒な箱みたいだけど。」ファーティマはにっこりしました。いつもアリーに優しいファーティマは、アリーに何を作っているのか説明し始めました。「これはね、カアバって言われるものの模型よ。」ファーティマが説明を続けようとすると、おじいちゃんが部屋に入ってきました。子どもたちは今日、教室に行っていたので、おじいちゃんと少しの時間しか一緒に過ごせていませんでした。おじいちゃんは箱を見て、それがカアバの模型で、ファーティマがアリーにカアバが何か説明しようとしているのに気づきました。

おじいちゃんは、アーイシャとハムザも部屋に呼びました。「みんな、こっちにおいで。アッラーがカアバを守ったときのお話をしてあげよう。まずはじめに、カアバが何なのか教えられる子はいるかな?」ファーティマが答えました。「今日、勉強したの。カアバはマスジド・アル・ハラームという名前のモスクの中にある、ムスリムにとって一番神聖な場所だって。ムスリムはみんな、カアバに向かってお祈りするのよ。」おじいちゃんはうなずき、にっこり笑いました。「ファーティマ、その通り。じゃあ誰が建てたのかは知ってるかい?」「私、わかるわ。」アーイシャが言いました。「預言者イブラーヒーム様とその息子、預言者イスマーイール様よ。」「素晴らしい!」おじいちゃんは言いました。「マーシャーアッラー、みんなイスラームについてよく知っているね。では、クルアーンの中にも書かれている、アッラーがカアバを悪い人たちから守った時のお話をしよう。」子どもたちはしっかり耳を傾けて聞きました。「預言者ムハンマド様のおじいさん、アブドゥルムッタリブの時代、イエメンの首都、サナにアブラハという名前のアビッシニア出身の知事がいたんだ。アブラハはたくさんの人たちがマッカに巡礼に行くことにやきもちを焼いていた。だから、みんながマッカに行くのをやめるよう、首をうーんと伸ばさないと頂上が見えないぐらいの高さの大きな建物を建てさせた。アブラハは、自分がカアバよりもきれいで大きな建物を建てれば、みんなもカアバではなくて自分のところに巡礼に来るようになると考えたんだよ。でも、困ったことに、誰もやっては来なかった。それどころか、一人の男がアブラハの建物を汚物で汚したんだよ。怒りと妬みで、アブラハはカアバを壊しに出発したんだ。」「その人、すごいいじわる!」アリーが叫びました。おじいちゃんはうなずくと、話を続けました。「アブラハはカアバを壊すために、象と馬、ラクダ、たくさんの数の兵士を集め、とっても大きな軍隊を用意した。エチオピアの王様にも手伝いを頼んで、エチオピアの王様は軍隊の先頭を行く、一番大きくて強い象を送ったんだ。アブラハは、この大きくて強い象の上に乗って、軍隊の先頭を行った。準備ができたら、軍隊はマッカへと進んでいったんだ。カアバはそのころ、部族のリーダーである、預言者様のおじいさんが管理をしていた。「アーイシャ、預言者様のおじいさんの名前を覚えているかな?」「わかる!アブドゥル・ムッタリブでしょ?おじいちゃん!」アーイシャは答えました。「その通り、アーイシャ、よくできたね!彼の名前はアブドゥル・ムッタリブ。とても親切で尊敬できるお方だった。いつでも自分の部族に公正に接していたから、みんなからとても好かれていたんだよ。アブラハは軍を止め、マッカの外れまで何人かを送った。すると彼らは手当たり次第、ものを盗んでいって、アブドゥル・ムッタリブのラクダ200頭もとられてしまったんだ。アブドゥル・ムッタリブはアブラハのところに行き、自分のラクダを返してくれるよう言いにいった。アブラハは自分の軍隊がカアバを壊しに行こうとしているというのに、自分のラクダのことだけを聞かれたので、驚いた。アブドゥル・ムッタリブはこう答えた。『私は、このラクダたちの持ち主だ。それと同様、カアバも、その持ち主であるアッラーがお守りになるであろう。』アブラハはアブドゥル・ムッタリブのラクダを返し、リーダーは帰って、人々に町を登ったところにある山に避難するよう呼びかけた。朝になり、軍隊がマッカに近づくと、驚くべきことに、象たちは急に立ち止まり、それ以上、動こうとしなかったんだ!アブラハと兵士たちは怒って、象たちを押したり、引いたりするものの、象たちは一歩も動こうとしない。」「すごい!これってアッラーの力だよね!」ハムザが自信満々に言いました。「その通り」おじいちゃんは答え、話を続けました。「アブラハは兵士たちに象を置いて進むよう命令した。すると、さらに驚くべきことがおきたんだよ。突然、アッラーはアバービールと呼ばれる、大変な数の小さな鳥たちを送った。鳥たちは空を埋め尽くし、それぞれ、3個の石を持っていた。鳥たちが石を投げると、それは弾丸のように兵士たちの体を突き抜け、象、ラクダ、馬でできた軍隊を全て打ちのめしてしまった。アブラハの軍隊は全部やられてしまい、カアバは無事だった。マッカの人々は喜びの声を上げ、アッラーがみんなとカアバを守ってくださったことに感謝をしたんだよ。」アーイシャ、ハムザ、ファーティマは笑いましたが。小さなアリーは怖くなってしまいました。アリーは言いました。「大変!アッラーが僕に鳥を送って、石を投げたらどうしよう!僕、カアバに指をつっこんじゃった!」おじいちゃんはアリーを抱き寄せ、安心させて言いました。「大丈夫だよ、アリー。アッラーは、イスラームのことを勉強する子どもたちのことが大好きなんだよ。アッラーは私たちにいろいろなことを教えるために、クルアーンでいろいろなお話をしてくれているんだ。このお話では、どんなに強い軍隊でも、怖がるべきじゃなく、アッラーのことを信じることが大事ということを教えてくれているんだよ。アッラーこそが一番強いお方で、私たちが思いもしない方法で助けることができるんだからね。」アリーはおじいちゃんに抱きつき、そのあとファーティマにも抱きつきました。「お姉ちゃん、僕もお姉ちゃんの作品、手伝っていい?すごく面白そうだもん!」ファーティマは答えました。「もちろんよ、アリー。」おじいちゃんは微笑み、子どもたちはファーティマが作品を完成させるのを手伝いました。

2009年12月05日

Sitti's Secrets おばあちゃんの秘密

今日は、ちょっと長編のお話を紹介します。対象年齢は5歳から8歳となっています。

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この本は特にイスラミック、という本ではないのですが(ところどころイスラーム的でない部分も多少あったりしますし)、何が素晴らしいかというと、まずはそのイラストの美しさです。そして、ストーリーの美しさ。言葉が紡ぎだす世界に大人でも魅了されてしまいます。

「私のおばあちゃんは地球の反対側に住んでいる。」で始まるこの物語、同じような状況にいるムスリムの子供はたくさんいると思います。この物語の主人公、アメリカに住むモナのおばあちゃんは遠くアラビアに住んでいます。一度、モナが父親と訪れたおばあちゃんの国では、話す言葉も文化も違いました、でもそこに言葉などは必要ありませんでした・・・。

この物語を読むと、我が家の子供たちの状況がダブって見えてきます。子供たちも、父親の国での思い出とダブらせながら話を聞いていました。また、最後の別れの部分は涙が出そうになります。最後にモナはアメリカの大統領に手紙を書きます。そこにはおばあちゃんの秘密を添えて。

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以下、日本語訳です。

ワード・ファイルはこちら(転載・配布自由)⇒Sitti’s Secrets おばあちゃんの秘密.doc

Sitti’s Secrets
おばあちゃんの秘密


(1ページ目)
私のおばあちゃんは地球の反対側に住んでいる。私がお昼のとき、おばあちゃんは夜。私の空が暗くなるとき、おばあちゃんの窓からは太陽がのぞいてる。おばあちゃんのレモンの木のレモンを明るく染めながら。寝るときはいつもこのことを考える。「おばあちゃんの番よ!」っていつも言うの。

(2ページ目)
私達の間には何マイルもの土地と水。私達の間にはたくさんの魚と街とバスと畑。

(3ページ目)
そして、大統領と物干し竿とトラックと「止まれ」の標識と「立ち入り禁止」の標識と食料品店とベンチと家族と砂漠と無数の木。

(4ページ目)
前に一度おばあちゃんのところを訪ねたの。おばあちゃんと私は話す言葉が違う。おばあちゃんと話すときはお父さんを通して話した。まるでお父さんが電話みたいに。お父さんはどちらの言葉もわかるし、私達が話すことを通訳できたから。

私はおばあちゃんのことを「シッティ」って呼んだ、アラビア語でおばあちゃんって意味だって。おばあちゃんは私のことを「ハビービー」って呼んだ。ダーリンって意味。おばあちゃんの声は鳥たちの鳴き声みたいに高く響いた。くすくす笑ったり、曲がり角を行く風みたいにヒューって音がしたりした。おばあちゃんの声には無数の流れがあった。

 数本のカールした黒い髪がスカーフの片側からのぞいてて、一本の白い髪がもう片側からのぞいてた。おばあちゃんの髪がしましま模様なのか知りたくてスカーフをとってみてほしくなった。

(5ページ目)
 そのうちすぐに私達は自分たちだけの言葉を作りだした。おばあちゃんは私のおなかを指差して、おなかがすいていないか聞いた。私はドアを指差して、外に行きたくないか、と聞いた。私達は畑まで歩いていって、男たちが豆を収穫するのを見て、口笛と拍手で空をほめたたえた。
 
 斑点模様の牛を飼っている家族から牛乳を買うために道を渡った。牛さんに「ハビービー」って呼んでみたら、私にウインクしたの。私達は口笛と舌打ちで牛さんに牛乳のお礼をした。牛乳はシッティの小さなティーポットに入れて持ち帰った。

(6ページ目)
 毎日、いとこのファウジー、サミー、ハニー、そして隣のヘンディアと一緒に遊んだ。中庭でビー玉遊びをした。あの子達のビー玉は青や緑で、まるで惑星のように埃の中を転がっていった。

(7ページ目)
 私のおばあちゃんは地球の反対側に住んでいる。おばあちゃんは朝食にきゅうりを食べる。パンとヨーグルトと一緒に。おばあちゃんは家の隣にある丸くて古いオーブンで、大きくて平べったいパンを焼く。真ん中で火が燃えていて、おばあちゃんは両手で生地をたたいて、オーブンの真ん中の黒い岩の上に広げて焼く。お父さんが、おばあちゃんが100年もの間、ああやってパンを焼いていると言った。

(8ページ目)
 おばあちゃんと私は午後にはレモンの木の下に座って、ミント入りのレモンティーを飲んだ。おばあちゃんは私がミントの枝を摘んであげると喜んだ。おばあちゃんはミントに鼻を押し付けて香りを嗅かぐのが好きだった。

 たまに、夕食のためにズッキーニにお米を詰めたこともあった。ハビービー、ハビービー、って歌いながらお鍋の中に詰め込んだ。それをやってる最中、アーモンドを割って、ミシュミシュって言うアプリコットを食べた。

 (9ページ目)
 ある日、シッティがスカーフをとって髪を外に振り出して、太陽の下、桶の中で髪を洗い始めた。その髪の長さにびっくりした。そして、やっぱり!しましま模様だった。自然にそうなったんだ、って言ってた。私は、髪を乾かすときに、くしでとくのを手伝ってあげた。おばあちゃんは三つ編みしてピンで上に留めてからスカーフをかぶってた。
 
 シッティの秘密を知ったような気がした。

(10ページ目)
 午後にはいつも階段を上ってシッティの家の屋上から、空を見て、空気のにおいを嗅いで、洗濯物を取り込んだ。私のおばあちゃんは、村の女の人たちが泉からくんだ水を入れた壺を頭の上に乗せて運ぶのを見たくて、その時間に洗濯物を外してた。おばあちゃんも昔はそうしてたみたい。お父さんが言うには、もう女の人たちは別に泉から水をくむ必要はないんだけど、そうするのが好きなんだって。昔から続く、忘れたくないもののひとつなんだって。

(11ページ目)
 お父さんと私が帰らなきゃいけない日、みんな、泣いて、泣きじゃくった。私のお父さんでさえも何度も鼻をかんでは外へ出て行ってた。私もシッティが私の頭を抱いて肩に押し付けたとき、いっぱい泣いた。いとこたちは、飛行機で食べられるように、ってアーモンドの入った袋をくれた。シッティは自分で縫った小さな巾着をくれた。巾着には、きらきらする糸でシッティのレモンの木が刺繍してあった。シッティはアーモンドを巾着の中に入れて紐をきつく締めてくれた。

(12ページ目)
 私達の飛行機は世界の反対側へ飛んでいった。
 おばあちゃんの手のタトゥーを思い出す。それは飛びたつ鳥のようだった。お父さんは、それは100年もの間、ずっとあるんだって言った。
 
 シッティの部屋の隅にあった緑色の古いトランクを思い出す。南京錠がかけてあって、その鍵には緑のリボンを通していつも首にかけていた。あの中には私のおじいちゃんの指輪と、金色の糸と、針と、古いドレスの青いベルベットの布の切れ端をたたんだものと、二冊の革の本、私のお父さんのアメリカに来る前の写真と、私の両親の結婚式の日の写真と、私が赤ちゃんのときのにっこり笑ってぷくぷく太ってる写真が入れてあった。私、ほんとにあんなふうだったのかな?

(13ページ目)
 家に帰ったあと、私はアメリカ合衆国の大統領に手紙を書いた。

 親愛なる大統領様へ
 私のおばあちゃんは、秘密をささやくレモンの木がある、世界の反対側に住んでいます。おばあちゃんはそれに話しかけ、自分の飲むコップから水をあげます。おばあちゃんは次にどの枝からレモンがなるかを当てます。村の年老いた男性や女性は皆、木を大事に世話しています。きらきら輝く葉っぱのいちじくの木を持ってる人もいます。落ちるときにはまるで雪のように見える白い花に包まれた、アーモンドの木を持ってる人もいます。

 昨夜、テレビでニュースを見ていて、心配になりました。もしアメリカの人々がシッティに会うことができたら、絶対シッティのことを好きになると思います。
 私のおばあちゃんは星や月や雲を読み取ることができます。夢やカップの底の紅茶の葉っぱも、読み取ることができます。私のおでこの上から幸運も読み取ることができるそうです。
 大統領様、あなたの大変なお仕事に幸運を祈ります。私は平和に一票入れます。私のおばあちゃんとともに。
心をこめて、
                               モナ

(14ページ目)
 私のおばあちゃんは、世界でこれから起こることを知っているかな?

 世界にはおでこがあるのかな?
 
 たまに、私はこの世界が、寝ている子供みたいに丸くうずくまりながら、宇宙の中で転がってる大きな体にように思える。人々は離れているけど、つながっている。

(15ページ目)
 私のおばあちゃんは地球の反対側に住んでいる。私が夢を見ている間、おばあちゃんはふわふわのベッドから起き上がって、ドアから出て、レモンの木に育つレモンをチェックする。おばあちゃんが起きて一番最初にやることはレモンに「おはよう」を言うこと。
 
 一日をかけて、中庭のおばあちゃんの木の、葉っぱがいっぱいうつった影の形は変わっていく。おばあちゃんはその影を見ながら生活をする。おばあちゃんは寝るとき、私のことを夢に見る
posted by うんみ at 23:02| Comment(2) | ちょっと大きい子向けストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月15日

An Eid Story : The Lost Ring あるイードの物語:なくなった指輪

今回は、少し長編です。お話を楽しみながら犠牲祭について学べる内容になっています。ちょっと長めのストーリーですが、イラストがいっぱい入っているので小さい子どもでも楽しんで聞ける内容です。

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ワード・ファイルはこちら⇒An Eid Story:The Lost Ring 日本語訳.doc(転載・配布は自由です。)

An Eid Story : The Lost Ring
あるイードの物語:なくなった指輪



(p.5)
 ラフマの祖母と従姉妹のムスリマが、イードの為にラフマの家を訪れていました。おばあちゃんは二人の女の子たちのために、イード用のドレスを作ってくれていました。
「合うかどうか、着てごらんなさい。」とおばあちゃんは言いました。ラフマとムスリマは長くてきれいなドレスを着てみると、リビング・ルームの中でくるくる回り始めました。「私たち、なんだかプリンセスみたいじゃない、おばあちゃん?」と、ラフマは笑いながら言いました。

(p.6)
 おばあちゃんは、生地をこねる手をとめ、にっこり笑いました。「マーシャーアッラー!二人ともとっても素敵よ。でも、汚さないように今は脱いでおきなさいね。」と、アドバイスしました。

 着替えてから、ムスリマはキッチンのテーブルの椅子に座り、おばあちゃんが片手で生地をこねるのを見ました。「今からは両手を使わなきゃね。」おばあちゃんがそう笑って金の指輪を抜くのをムスリマは見ました。それがおじいちゃんからの特別な指輪だということをムスリマは知っていました。
 
 ちょうどそのとき、ラフマのパパとママが玄関から入ってきました。二人ともイードの買出しで大忙しだったのです。「アッサラーム・アライクム、ママ、パパ。」ラフマは言いました。「アッサラーム・アライクム、ハーリドおじさんとファルナーズおばさん!」とムスリマも挨拶しました。「ワアライクムッサラーム、子供たち。」ラフマの両親は答えました。「ママ、楽しかった?」とラフマは聞きました。「いいえ、ダーリン、とっても疲れたわよ。」とママはラフマにハグをするため腰をかがめながら答えました。「私は楽しかったけどね。」とパパは笑いました。「買い物は私にとっては楽しみのひとつだ。」ラフマのパパは普段は病院で働いているので、買い物に行く時間がほとんどないのです。

 ママはキッチンに入ると、おばあちゃんがイード用のサモサのための生地を用意しているのを見ました。「ああ、お母さん!」とママは大声で言いました。「料理は私にやらせてよ。お母さんを疲れさせたくないわ。」

(p.8)
 「サモサのための生地を作ろうとしていたんだけどね。」と、おばあちゃんは言いました。「あなたが戻ってきたことだし、今は私が持ってきたギフトを子供たちにあげようかしらね。マルチ・マドラサっていう物よ。」「まあ!きっと気に入るわ。」ママは答えました。「近所にいるハーシムって子がそのプログラムを持っているのよ。とっても面白いの!」

ちょうどそのとき、ムスリマがキッチンに入ってきて聞きました。「ファルナーズおばさん、いつサモサ作るの?ラフマと私、作るのを手伝いたいの。」「あと一時間ぐらいでよ、ダーリン。」ママは二階へ、いくつかの買い物袋を大変そうに運びながら答えました。

パパがイードのための電飾を家の外や戸口に飾りつける間、子供たちはおばあちゃんと遊びました。まもなくズフルの礼拝の時間になりました。

ラフマの兄弟、ターハーとハムザは皆が礼拝できるよう、床にシートを広げました。それから、ハムザがアザーンを言い、パパが礼拝を先導しました。皆が礼拝を終えた後、おばあちゃんが大人には紅茶、子供たちにはホット・チョコレートを作ってくれました。

しばらくして、ママはサモサの中身の準備を始めました。ママは丁寧に、マッシュしたじゃがいも、刻んだグリーンチリ、みじん切りのたまねぎ、スパイス類、塩をお皿に載せて並べました。

「うーん。」ママは、うなりました。「何かが抜けているのよね。」ママは材料をもう一度眺めてから気づきました。「そうそう、グリーンピース!」

(p.10)
「ムスリマとラフマ、ダーリン!」ママが呼びました。「材料を混ぜるお手伝いの準備はできた?ママは今、冷蔵庫にグリーンピースをとりに行くところよ。」ラフマは一週間前からずっとサモサを作ることを楽しみにしていました。ラフマは辛くてスパイシーなインドのスナックを食べるのが大好きだったのです。二人の女の子たちは手を洗うために洗面所に駆けていきました。

ラフマがキッチン・カウンターに一番に着き、踏み台の上に立ちました。ラフマは生地のボウルの横におばあちゃんの指輪が置いてあるのを見つけました。「あ〜!おばあちゃんの指輪!」ラフマは叫びました。ラフマは指輪をはめてみましたが、自分の指には大きすぎたので親指にはめました。ムスリマがやって来てラフマの隣に立ちました。二人とも生地をゆっくりとつついてみました。まるで大きくてふわふわの雲のようでした。
ママがキッチンに戻ってきました。ママは大きなボウルにグリーンピースを全部入れました。そして、マッシュしたじゃがいもの中に残りの材料を加えました。「二人とも、手は洗った?」とママが聞きました。ラフマとムスリマはうなずきました。「オーケー。誰が最初?」ママが聞きました。「ラフマが先でいいわ、私より小さいから!」とムスリマが譲りました。「ありがとう、ムスリマ!」ラフマはにっこり笑いました。

ラフマは両手をボウルの中に入れ、中身をぎゅーっと握り締めました。「わ〜!これ、すっごく気持ち言いわよ、ムスリマ!」ラフマは笑いました。

(p.12)
まもなく、ムスリマの番になりました。ラフマは手を洗ってママがサモサの生地を丸く伸ばすのを手伝いました。

子供たちが手伝う間、ママは買い物の様子について話してくれました。

伸ばした生地に中身を入れる番になったとき、おばあちゃんがキッチンにやってきて手伝いました。

ラフマは最後のサモサを保存容器に詰めました。「よく頑張ったわね、あなたたち!」ママは言いました。「今はこれを冷凍庫に入れておいて、インシャーアッラー、イードの日に揚げるわね。」

「祝福されたイードを迎えるためにきれいにしなくちゃね。」とおばあちゃんは言いました。そこで、残りの午後は家族で掃除機をかけ、モップをかけて、ほこりをはらい、洗い物をするのに費やしました。日が暮れるころには皆疲れていました。最後に、パパが子供たちと一緒に座り、イード・ル・アドハー(犠牲祭)について話してくれました。

「ラマダーンが終わったあとのイードの名前を知っている人はいるかい?」パパが聞きました。「イード・ル・フィトルよ!」ムスリマは叫びました。「マーシャーアッラー!」パパが言いました。「じゃあ、次にくるイードの名前はわかるかい?」「あぁ、パパ!私の先生のシスター・ナディアが先週、教えてくださったわ。イード・ル・アドハーでしょう、犠牲祭!」

(p.14)
「よくできたね、ラフマ。」パパが褒めました。「ビッグ・イード(大きなイード)とも呼ばれるんだよ。」

パパは家族に、預言者イブラーヒームとその家族について、そして、どれだけ彼がいつもアッラーに従順であろうとしたか、を話してくれました。「彼はアッラーのことを本当に愛していたんだよ。」パパは説明しました。「そして、人々のこともとっても愛していたんだよ。私達も預言者イブラーヒームのようになれるよう、努力しないといけないね。」

パパが、アッラーがどのようにして預言者イブラーヒームの従順さを試したか、そして、預言者イブラーヒームが自分の愛する息子のイスマーイールを犠牲として差し出すことさえも厭わなかったこと、いざその時が来たときにイスマーイールの代わりに犠牲にするように、とアッラーが羊をお送りになったことなどを話す間、子供たちが興奮しながら聞きました。

「だから世界中のムスリムはイード・ル・アドハーの日にヤギや羊、ラクダや牛を犠牲にするんだよ。」パパは説明しました。「預言者イブラーヒームやイスマーイールのように私達もアッラーに従順であります、ということを示すためにね。」「貧しい人たちもその日は幸せなのよね、パパ?」ラフマが言いました。「マーシャーアッラー!そうだよ!その日は貧しくて困窮している人たちもお肉やプレゼントを受け取るんだ。愛とやさしさに溢れているんだよ。」パパが答えました。

(p.16)
「アッラーは私達にいつもそうあってほしいと思っていらっしゃるのよ。」おばあちゃんが言いました。「私達にいつもお互いに親切で、愛し合い、分かちあってほしいと思っていらっしゃるのよ。」

「インシャーアッラー、明日はアラファーの日のために断食して、病院にいる病気の子供たちを訪ね、お菓子などをあげることにしよう。」とパパが言いました。

アラファーの日を、子供たちは忙しく過ごしました。病院を訪ね、地域や近所の人々にプレゼントを配ったのです。

すぐに、断食を解く時間となりました。「誰がドゥアーをしたい?」とパパが聞きました。「ハーリドおじさん、私、いいドゥアーを勉強したの、言ってもいい?」ムスリマが言いました。「もちろん、いいよ、ムスリマ。」パパは微笑みました。「アッラーからのたくさんの祝福が皆に届きますように、アッラーが皆に平安を与えたまいますように、そしてアッラーが皆に楽しく祝福されたイードを与えてくださいますように、アーミーン。」ムスリマが言いました。「アーミーン!」と皆が言いました。「美しいドゥアーだったわね、ムスリマ。」とおばあちゃんが微笑みました。

マグリブの礼拝のあと、皆は食事を済ませ、洗い物や掃除を手伝いました。そして、リビングルームでパパの周りに座りました。

(p.18)
パパは、祝福された預言者ムハンマドのイードの礼拝におけるスンナをおさらいしました。「イード・ル・アドハーでは、礼拝のあとに食べるのがスンナなんだよ。」パパが説明しました。「インシャーアッラー、皆が礼拝のため集まるイード・ムサッラでは、おいしいご馳走が容易されるはずだよ。」

子供たちは、イードでムスリムが何をするかを、お互いに確認しあいました。「毎回、沐浴(グスル)とウドゥーをして一番良い服を着ること。」ラフマが言いました。「お金や服、食べ物を貧しい人たちにあげること。」ターハーが言いました。「で、お肉の3分の1を貧しい人たちに、3分の1を友人や親戚にあげること。」とハムザが言いました。「朝早くおきること。」とムスリマが言いました。「そして、唱える、『アッラーは偉大なり、アッラーは偉大なり。アッラーの他に神はなし。アッラーは偉大なり。アッラーは偉大なり。アッラーに称賛あれ。』」「マーシャーアッラー!」ママが言いました。「みんな、すばらしいわ!よく全部覚えているわね。」

その夜、子供たちは興奮してなかなか眠れませんでした。

(p.20)
ついに、イードの日を迎えました。「アルハムドゥリッラー!」ラフマが言いました。「スブハーナッラー!」とムスリマが言いました。皆、あわただしく準備をしました。

イード・ムサッラでは皆がタシュリークのタクビールを唱えていました。

イードの礼拝のあと、パパは友達と一緒に、農場へクルバーニ(犠牲)のための羊を選びに行きました。

夕方、すべてのお肉が配られ、イードの夕食の準備が終わると、ついにお客さんたちが次々と訪れ始めました。玄関のドアがノックされるたびに大きな挨拶の声「イード・ムバーラク!」が響きます。

しばらく後に、おばあちゃんが突然指輪をなくしたことに気づきました!「あぁ!インナーリッラー!もしかしたらイードの礼拝で落としたのかもしれないわ!」とおばあちゃんは叫びました。

(p.22)
皆が固まりました。皆、おばあちゃんがどれだけあの指輪を大切にしていたか知っていたからです。「違うわよ、おばあちゃん。」ムスリマが言いました。「最後に私が覚えてるのは、サモサを作っているときで、おばあちゃんはキッチン・カウンターに指輪を置いたわよ。心配しないで、インシャーアッラー、見つかるわ。」おばあちゃんが心配そうに言いました。「インシャーアッラー、家の中にあるといいのだけれど。」

ムスリマは子供たちを皆集めました。「こういうのは任せてよ!」と隣に住むハーシムが言いました。「僕、探偵ごとは得意なんだよ。まず一番初めにやらなきゃならないのは、皆に質問することさ。」突然、ラフマは、はっと大きく息を飲み込みました。「ヤー、アッラー!」ラフマは叫びました。ラフマは両目を大きく見開き、両手で顔をふさいでいました。「ああ、まさか!」ラフマは自分がおばあちゃんの指輪をはめたことを思い出したのです。「指輪はサモサの中よ!」ラフマは、どもりつつ言いました。子供たちは信じられない、という顔でラフマを見ました。「サモサの中ってどういう意味なんだい?」とハーシムが聞きました。「どうやったら指輪がサモサの中に入るのさ?」「スブハーナッラー、でも、そうなの!」ラフマは訴えました。「私がサモサ作りのお手伝いをするときおばあちゃんの指輪をはめていたの!」「じゃあ、やるべきことは一つだけだ。みんな、サモサを食べる前に全部開いてみるんだ。」とハムザが言いました。「それしかない!」
(p.24)
子供たちはダイニング・テーブルの上の大きなサモサのお皿を見ました。子供たちは皆サモサを手に取りました。一つ、そして、また一つ、と子供たちは食べる前にサモサを割って指輪がないか確認します。

ママがナプキンを取るためにダイニング・ルームに入ってきて、子供たちを不思議そうに眺めました。「サモサがそんなにおいしいのね?」困惑した顔で眉毛を上げながらママが言いました。子供たちは皆サモサを手にしています。皆、笑ってうなずきました。ママは満足げにうなずき、微笑み返して「アルハムドゥリッラー。」といいました。「でも、ほかの食べ物も食べてね。」

(p.26)
子供たちは作業を続けました。ついに、最後の一個のサモサが残りました。皆、おなかを抱えています。「もう、食べられないよ。」ハムザは泣き言を言いました。ムスリマは最後のサモサを手にとり、それを四つに割りました。「ここに絶対あるはずよ。」ムスリマは、ターハー、ラフマ、ハーシムに一つずつ渡しました。「ここじゃないよ!」と皆、次々にがっかりしながら叫びました。

ラフマの顔が赤くなりました。すぐにも泣き出しそうな顔です。「あれはおばあちゃんの大事な指輪だったのに、今はもうなくなってしまったんだわ!」ラフマは泣き叫びました。ラフマは惨めに感じました。「ママやおばあちゃんにこのことを伝えたら、みんなの楽しいイードをめちゃめちゃにしちゃうわ。」ラフマはすすり泣きました。

「心配しないで。インシャーアッラー、おばあちゃんの指輪は皆で見つけるよ。」
とハムザが元気づけました。「そうよ。」ムスリマも励ましました。「皆でアーヤト・ル・クルシーを唱えて、アッラーの助けをお願いしましょうよ。」ドゥアーをした後、子供たちはリビング・ルームに入りました。お母さんたちはある一角に集まってグッド・フェイス・スクールの資金調達者について話していました。

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お父さんたちは暖炉の周りで世界の諸問題について話していました。ちょうどそのときです、ママが叫びました。「痛っ!」皆が見ると、ママは口と半分食べかけのサモサを押さえていました。「スブハーナッラー!今、何か硬いものを噛んだの!」ママは叫びました。子供たちの顔がパッと明るくなりました。ママはサモサの中から何かを取り出しました。「スブハーナッラー!お母さん!あなたの指輪よ!」彼女は信じられない顔つきで言いました。おばあちゃんは指輪が見つかったことをとても喜びました。

ラフマはおばあちゃんのところに行き、抱きつきました。「ごめんなさい、おばあちゃん。」ラフマはささやきました。「たぶん、私、おばあちゃんの指輪を誤ってサモサの身の中に落としてしまったの!怒らないでね。」「大丈夫よ。」おばあちゃんはラフマをきつく抱きしめました。

ラフマはムスリマを見上げ、くすっと笑って言いました。「たぶん、これからは、いつもこの日のことをサモサ・イードって思い出しちゃうわね。」
posted by うんみ at 21:21| Comment(0) | ちょっと大きい子向けストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする